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「失敗」と「ない」から「楽しい」を作ろう! (抜粋) クラフト作家 相馬 智寿子
■素材を組み合わせる
白い紙に黒いペン。黒い紙に白いペン。白いわたに黒い石。黒い陰に白い蝶…。白と黒の2色しかなくとも
素材の合わせ方でイメージは無限に広がります。
しかし自由な分、自分でよく考えなくてはなりません。どの組合せが一番好きなのかを。
私がこども達に教えたい素材の組み合わせには、大きく2つの方向があります。
1つは「色々な素材を組み合わせる」ということ。
そしてもう1つは「限られた素材を組み合わせる」ということです。
■色々な素材の組合せを「失敗」から見つける
素材の組合せのパターンは数えきれないほどあります。それをどう組み合わせても面白いものになるでしょう。
では、その中からどういった組合せを選びますか?
ごく自然な組合せには、紙と絵の具、木と釘、布と糸、などがありますね。
しかし、紙と化粧品、木とシリコン、ワイヤとスポンジ、布と樹脂…こんな組合せもあります。
意外だけれど楽しくなるような組合せほど、実は失敗から生まれる事が多いものです。
例えば、日々の生活でのごく小さな失敗…絨毯にお茶をこぼしたらシミになった。
網戸に鉛筆を刺したら穴が広がった。
濡れたテーブルに雑誌をおいたら模様が写ってしまった…などなど。
しかし「失敗」を逆から読むと「発見」なのです。
色を染めるにはお茶でも良い。綺麗な穴をこじ開けるには鉛筆でよい。雑誌の表紙は水でくっつく。
「すごい発見だ!」というほど感動的でないものでも、何年もの間に相当量積み重なっていくものです。
では、私の失敗から生まれた色々な素材の組合せをご紹介しましょう。
*紙と化粧品…画用紙を用意しようとした時に、たまたま指についていたアイシャドウが
ついてしまったことがありました。
その色は肌につけるよりはるかに綺麗なブルーに見え、淡い感じはパステルにも似ていました。
そこからさらに口紅やマニキュア、アイライン、マスカラ、ファンデーションなどなど、
色のついている化粧品を片っ端から画材代わりにしてみましたが、本当に楽しいものでした。
使わなくなった化粧品でいいですね。マジックやクレヨン、絵の具などとの組合せで使えば、
さらに楽しさやイメージが広がります。
香水やアロマオイルなどをたらせば「香る絵」もできますね。
さて、この経験は容易に台所編にも変化していくでしょう。しょうゆ、ソース、ケチャップ、果汁などなど…。
筆で塗らなくてもいいのです。台所にあるもの…スポンジや割り箸、スプーンの背や、フォークなどでも。
指で味見をしながら描いてみるのも楽しいですね。
*木とシリコン…風呂場の目地をシリコンで修理していた時の事です。
拾ってきた流木はまだ洗い終わらずに足元にありました。
出にくくなったシリコンのチューブを勢い良く振った時、弧を描くように中身が飛び出し、壁や天井、
そして流木にも白い水玉模様が散りました。湿った焦げ茶の流木にクリームのように白いシリコン。
このコントラストはワクワクするものでした。
シリコンを絞り出し袋で出せば…まるで本物の生クリームです!
*アルミワイヤとスポンジ…押し入れの整理をしていた時、作りかけの座ぶとんがウレタンのまま
数枚出てきました。適当に押し込んでしまった様で、上下左右には色々な物の痕がついています。
そこで意図的に痕をつけてみようとカラフルなアルミワイヤを縫う様に色々な方向から刺してみました。
ワイヤの芯が入るわけですから、曲げたりねじったりも簡単にでき、変わった形のオブジェのようなものが
できあがりました。ここで予想しなかった事…ワイヤがスポンジを突き抜ける際の音です。
サクサクとした何とも言えない音でした。特に想像とは異なるようなものは、実感のある経験が多ければ多いほど、
想像力にも幅を与えていくこととなります。
これらの素材合わせは、まさに失敗から始まっているものですから、それを「肯定的に考え直す」という
作業を自然に行う事となります。失敗を、冷静に逆から見る事ができれば、様々なトラブルにも
強くなることでしょう。意外な素材の組合せはこうした日々の生活からでも、十分見つける事ができます。
■「ないこと」から工夫する素材の組合せ
「〜がない」という厳しい状況ではさらに、規制概念や思い込みを取り払わないと何も作れなくなってしまいます。
そして、限られた要素の中からでも、「どうしたいのか」というイメージをはっきり持つ事ができれば、
新しいものを買わなくても工夫できる事はたくさんあります。
これはほんの一例ですが…「絵を描こうとしたら紙がない」とか「貼ろうとしたらのりがない」といった事、
誰もが経験したことがあるはずです。こどもが困っていたら「どうなればいいと思うの?」と聞いてみましょう。
その答えは必ずしも「買って!」ではないはずです。そう、簡単に買って済ませようとするのは大人なのですから。
*絵を描こうとしたら紙がない。= 描けるものがあれば何でも良いと考えます。
そしてこんな時こそ、思いきって違うものに描いてみます。折り紙や広告の裏、というような
当たり前の物ではなく。アルミホイルの芯、お菓子が入っていた箱の内側、無地のペーパーバッグ、
着なくなったTシャツなどなど。
お母さんも怒らなくて済むようなものはいっぱいあるのです。
わざわざお金を出してスケッチブックを買ってきてしまうより、ずっと楽しい経験ができますね。
*貼ろうとしたらのりがない。= くっつけばいいと考える。
簡単に言いますと、のりがなければのりを作ればいいわけですから、ごはん粒でも小麦粉を溶いてもいいでしょう。
しかし、くっつけるという事の根本を考えると、必ずしものりである必用はありません。
縫ってつける。ねじってつける。折ってつけるなどなど。縫ってつけるのは、針と糸でなくてもいいですね。
ワイヤでもヒモでもいいでしょう。そしてねじれるのは針金だけではありません。
ロープは何本かのヒモをねじりながらまとめてありますし、紙やアルミホイルもねじれます。
折り紙は折るだけで様々な部分がくっついていますね。これを色々な場面に応用していくのです。
この様な考え方をしていくと自然に、裁縫箱の中にあるものは洋裁をする時に使うもの、のりは工作、絵の具は絵画
という枠がなくなってきますね。これが規制概念をはずす、という事にもつながります。
では少し外に出てみましょう。私はこどもが小さい時は、よく浜辺へ連れて行きました。
浜辺には必ず何かが落ちているものです。しかし、気の効いた材料や道具はもちろんありません。
貝や木、枝、石、プラスチックゴミが多いでしょうか…。そして砂と水。
これらのものを使って何かを作ったり描いたりする事は、綺麗な机に高価な画材セットで絵を描くより、
はるかに楽しいものです。
まず「見つける」とか「拾う」という行為にはイメージのアンテナが鋭く働いていますし、
動き回って探しますから、光や風を無意識のうちに感じています。これがさらに感覚を刺激するでしょう。
こういった中では、たとえ材料が「ゴミ」しかなくとも大満足のものが作れるものです。
もちろん海に限らず、公園や野山でもいいですね。小さな庭でも、ベランダでもできる事です。
*海で作る…浜辺などの広い場所では、とにかく全体を見渡しても何も見えません。
足元半径1メートルくらいでしょうか。まずは「見てみよう」から始まります。
そして実際に手に取り、拾ってみる事です。また、道具はありませんから、砂は手で掘ったり、
靴で掘ったり、貝で掘ったり、棒だけでも穴は掘れますね。
そして浜辺自体が大きな砂の土台ですから、色々なものを自由に刺したり固定したりできます。
流木は柱になり橋になり、テーブルやイスにもなるでしょう。人や動物にもなるかもしれません。
綺麗なビーズやモール、リボンがなくとも貝や石、木の実、プラスチックなどが個性的な飾りとなります。
また、サインペンがなくても模様は描けます。
そう、落ちているビニール袋の端に小さな穴を開け海の水を汲んできて、砂の上に描くのです。
「ない事」などはまったく問題にはなりません。逆にそこから広がる世界は、屋内で作るよりはるかに
ダイナミックなものとなるでしょう。
*庭やベランダで作る…海がなくても大丈夫です。庭やベランダの鉢植えを使ってみましょう。
色々な形の葉っぱや花の植木鉢、シャベルにじょうろ。それらの配置で絵を描くように、
立体コラージュをしていくのです。
植物によって緑の色や質感が違いますから、位置を変えるだけで違う世界が広がります。
背の高い順に並べたり、色の違いによって並べ変えたり、また、直線に並べる、円に並べる…
並べ方だけでも何種類もありますね。
そして今度はシャベルやじょうろも組み合わせてみます。落ちている葉っぱや石もマジックで模様を描けば
素敵な飾りになりますね。
その他、牛乳ビンなどに剪定した葉や花を挿して鉢と組み合わせて並べても楽しいでしょう。
ビンにビー玉などを入れると、鉢の落ち着いた色とは対照的に、クリアな季節の光を感じる事もできます。
作る事とは、何かの物体を作り出すという事に限りません。
並べ変えたり、組合わせを変えて「今までと違う世界」を作り上げる事もそうなのです。
そして「さあ作ろう!」と構える必用もないですし、きっちり材料を揃えてから始めるものでもありません。
小さい頃からごく身近にあるものなのですから。
遊ぶように自由に広げ、楽しさと共に自分の心にしまうのです。
そして、ない事から経験した工夫は、色々な素材を組み合わせる時にも大きな力を発揮し、
逆に、色々な素材を組み合わせられるからこそ、限られたものの中でも、自分らしさを保てるのです。
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